報道被害アンケートの概要について

  私たちは今年の2月に、報道被害に遭われた方々に対する手紙によるアンケートを実施しました。 事件や事故の被害に遭った方々と刑事事件の被害者・被告人の立場に立った方々に、 アンケート用紙に記載されている質問に対して回答を記入していただく方式で、 総数598通のアンケートを発送し、24通の回答をいただきました。
  内訳は次の通りです。
  事件や事故の被害に遭った方々には170通を発送して15通の返事をいただきました。 また、被害者・被告人の方々には428通を発送して15通の返事をいただきました。
  以下、アンケートの質問項目の要旨と回答の概略をご報告いたします。
報道被害救済弁護士ネットワーク(LAMVIC)


第1 事件や事故の被害に遭った方々に対するアンケート (回答総数9通)
1 どのようなマスコミに報道されましたか? (複数回答あり)
  新聞        7件
  テレビ       7件
  雑誌        5件
  ラジオ       1件
  インターネット   1件

2 報道されたのはどのような内容でしたか?
  「暴走族ではないのに暴走族であるという報道をされた」 等の誤報の被害や、 また、事件の被害者として顔写真や実名が公表されてしまった等の回答がありました。

3 報道される前にどのような取材をされましたか?
  「自宅に電話がかかってきた」
  「自宅に直接来訪された」
  「仕事場にもカメラを向けられた」 など。

4 報道の内容について、事件のプライバシー等についてまで報道されていたと感じましたか?
  この質問には、「いいえ」 が1件であるのに対し、5件の 「はい」 の回答がありました。
  そしてその内容については、「顔写真を出されたこと」 を挙げた方が複数ありました。

5 マスコミに報道されたことによって社会の中で不利益を受けましたか?
  この質問も、「いいえ」 が1件であるのに対し、「はい」 が5件ありました。
  その内容としては、
  「素顔が出てしまったことによってプライバシーがなくなった」、「田舎の親類にいやな思いをさせた」 など、 メディアに公表されてしまうことによる影響の大きさを伺わせる回答がありました。

6 被害者側の情報が報道されたことについてどのようにお考えですか?
  これに対しては、「事実が正確に伝えられていない」、「触れて欲しくなかった」等の否定的な回答のほか、 「報道によって支援者が増えた」等の肯定的な評価もありました。

7 報道の扱い方のどのような点に不満を持っておられますか?
  「事実でなく、想像でイメージを作りあげている」
  「どのようにして顔写真を手に入れたのか、 私たちの了承もなく公共の電波に乗ってそれが流れたのか流すことに何の問題もないのか、が不満であると共に疑問」
  「マスコミは、少ない情報から想像で当事者のことを評価している。 事実からかけ離れたことしか知らないのに、さも知っている様に報じている。」 など。

8 報道機関の取材によって迷惑あるいは不利益を受けましたか?
  この質問も 「いいえ」 が1件、「はい」 が5件でした。
  そしてその内容としては、「取材陣のために自宅に帰れない」 という回答が多数あり、 また、時間外の訪問や近隣にまで及ぶ取材を挙げた方がありました。
  さらに、「事件解決後に、カメラマンやカメラクルーから笑顔の写真を無理やり求められた」 という回答もありました。

9 事件報道による被害について自由にお書きください。
  「報道に間違いがあった場合、はっきり分かる訂正の報道をお願いしたい」
  「取材報道人のつめかけ等のマナーの無さにいらだち憤慨を感じた」
  「毎日報道されている事が全く信じられなくなった」など。

10 報道被害に遭ったとき、何らかの相談機関に相談をしましたか。
  この質問に対する 「はい」 の回答は3件だけあり、内訳は、「警察」 が2件、 「弁護士」 が2件 (計4件となるのは複数回答のため) でした。

11 弁護士会または弁護士に相談をしなかったと答えた方は、なぜ相談をしなかったのかお答えください。
  これに対する回答は、「相談相手として弁護士の存在は全く頭になかった」「相談先がわからない」 と、 弁護士に対するアクセスの困難さを浮き彫りにするものでした。

12 報道された内容や取材の方法等について、被害回復の手段をとりましたか?
  「はい」 4件、「いいえ」 3件

13 (被害回復の手段をとらなかった方への質問)被害回復の手段をとらなかったのは、どのような理由からですか?
  これについては、「被害回復の手段がわからなかった」「事件が大きすぎてそれどころではなかった。」
と、事件のただ中で五里霧中になっている状況がみられました。

14 報道被害を受けた場合、相談窓口が必要だとお考えですか?
  「はい」 7件、「いいえ」 0件

15 報道被害専門の相談機関にはどのような対応を望みますか?
  「被害者の立場に立って、親身に相談に乗ってほしい。」
  「危機回避の手段などを教えてほしい」など。

16 事件報道のあり方について、自由にお書きください。
  「報道人の取材はマナーを持ってほしい」
  「被害者とその家族の情報がどこまで流れることが許されるのか?  報道する側も他社をだしぬくという感覚がヒシヒシと伝わってきた。被害者は商品なのか?」
  「報道する側もそれを読み見る人がいるから報道するのだとは思うが、『ここまで』 というラインに関する議論が欲しいと思う。」
  「真実の報道と二次被害のない様な内容にして欲しい」
  「プライバシーを保護して欲しい」 など。

第2 被疑者・被告人の立場に立った方々に対するアンケート (回答総数15通)
1 どのようなマスコミに報道されましたか?(複数回答あり)
  新聞    12件
  テレビ    7件
  雑誌     4件
  ラジオ    2件

2 報道されたのはどのような内容でしたか?
  「住まいや名前を報じられた」
  「根拠のない憶測に基づく悪い話を列挙された」
  「事実がはっきりしていない段階で悪人のように報道された」など。

3 報道される前にどのような取材をされましたか?
  「近隣住宅を戸別に回り、私自身の日頃の生活態度や、顔の写った写真は持っていないかなどを聞いて回った。」
  「自宅へ訪問し父親にインタビューした。」
など、近所や家族への取材に多数の回答がありました。

4 その取材の仕方について感じたことをお書き下さい。
  「プライバシーが侵害された」
  「当人の意見を無視して勝手に記事にされていて頭にきた」
  「事実のみを尋ねるのではなく、質問の仕方に、いかにセンセーショナルな内容にするかという意図が感じられた。」
  「近隣の方の中には迷惑なことであったと思う。」など。

5 報道の内容はあなたの言い分を十分に伝えていましたか?
  「書いてあった」 1件、「あまり書いていなかった」 3件、「全く書いていなかった」 8件

6 マスコミに報道されたことによって社会の中で不利益を受けましたか?
  この質問には、「いいえ」 が3件であるのに対し、9件の 「はい」 がありました。
  そしてその内容としては、
  「新聞によって知り合いに事件内容を知られ友人を失った」
  「友人と仕事を失った」
  「職業及び収入が得られなくなった。当初は今までの所では生活もできず、遠方に移り住むことも考えた。 今でも他人と接することは気になる。」
  「テレビでも報道されたので仕事場、近所の人、たくさんの人に知られてしまい、家族にも大変迷惑がかかってしまった。」
等の回答がありました。

7 あなたが受けた刑事処分と比較して、報道された内容には行き過ぎがあったと思いますか?
  これには、8件の「はい」回答がありました。
  その内容としては、
  「半年間に行われた公判すべてにおいて実名入りで紙面、テレビ、ラジオに取り上げられたことは行き過ぎと自身には感じた。」
  「私の経歴全てについて悪意に満ちた話をでっちあげて、それらしく報道された。全く根拠のない噂話で話をつくりあげられた。」
等の回答がありました。

8 報道機関の取材によって迷惑あるいは不利益を受けましたか?
  「はい」 7件、「いいえ」 1件。
  具体的には、
  「家族に多大な迷惑があった。マスコミが多数来て、家に足を踏み入れたり、
多くの車両が近隣に無許可で駐車し、警察も出動した。」   「小学生の子ども2名が一時登校をしたくないと言い出した。」
  「会うと話をでっちあげられる。会うことを拒否すると 『どんなことを書かれても文句がないのだな』 と脅かされた。」
  「事件とは無関係の友人知人に対してまで取材をされた。」
等の回答がありました。

9 事件報道による影響や被害について体験があれば自由にお書き下さい。
  「自分の事が報道されたと知り精神的に苦痛だった」
  「私は事件を否認していたが、警察から見せられたマスコミの記事に虚偽架空の事実が書かれていたのをみて、 家族がどのような被害を受けているのかを考えると、事件の終結を急ぐ気分になった。」
  「周りの目が気になって、近所の方と話をするのもためらわれた。」 など。

10 報道被害にあったとき、何らかの相談機関に相談をしましたか。
  この質問に対する 「はい」 の回答は4件だけであり、内訳は、「警察」 が2件、「弁護士」 が2件でした。

11 弁護士会または弁護士に相談をしましたか?
  「した」 2件、「しなかった」 7件

12 11で相談しなかったと答えた方は、なぜ相談しなかったのですか?
  「罪を認めたため」、「拘留中であり、私自身もどうなっていたか知らされていなかった」 等、 被疑者・被告固有の理由が目立ちました。

13 報道された内容や取材の方法等について、被害回復の手段をとりましたか?
  「はい」 1件、「いいえ」 11件

14 (被害回復の手段をとらなかった方への質問)被害回復の手段をとらなかったのは、どのような理由からですか?
  「そのようなことをしてもまた騒がれるだけと思った。」
  「家族や社員の生活があるため」
  「マスコミに対する固定観念があり、現在の日本のマスコミの低俗さには諦めと無力感がある。」 など。

15 報道被害を受けた場合、相談窓口が必要だとお考えですか・
  「はい」 14件、「いいえ」 0件

16 報道被害専門の相談機関にはどのような対応を望みますか?
  「家族関係者等、本人以外の報道は、すべて了承を得てから報道するよう、 それをしなかった場合には賠償請求するよう弁護してもらいたい。」
  「心理学、法律等の専門知識を持ちつつも、当事者の言い分、立場を理解する努力をして欲しい。」 など。

17 事件報道のあり方について、自由にお書きください。
  「マスコミは、その報道の仕方により、その家庭の一生を大きく変えてしまうことを理解して、真実を忠実に伝えてほしい。」
  「覗き見するような扇情主義が低俗な雑誌を筆頭にマスコミ全体にあるように思える。 事件報道は何の為にするのかというポリシーが欠けているのではないか」

第3 まとめ
  アンケートを拝見して、マスコミの取材や報道の対象となった人々にもたらされる様々な影響や被害の大きさを改めて認識しました。 同時に、報道被害に遭いながら、立ち上がっても苦しみを増大させるだけだと考えて、 あらかじめ被害回復をあきらめてしまう方がいたことに事態の深刻さを感じました。 そして、そのような人々の相談窓口として役に立つために弁護士の努力がまだ十分でなく、 その方面での要請が強 く存在していることにも気付かされました。
  私たちLAMVICの試みによってこのような現状を変革するひとつの契機にしなければならないと、 今回のアンケートを拝見して決意を新たにした次第です。