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〈エッセイ〉 ・テレビ東京窃盗団報道問題について ・弁護なければ逮捕があった──報道被害における弁護士の役割── テレビ東京窃盗団報道問題について 弁護士 飯田 正剛 テレビ東京の 「窃盗団報道問題」 は、テレビがかかえている問題を改めて浮き彫りにした。 まず、情報提供者への金銭の提供である。各局とも 「建前」 ではあり得ないことと言う。 しかし、本件が氷山の一角に過ぎないのではないか、との疑問が拭えない。 「見つからなければないと同じ。」 という倫理観しかないのであれば、もはや絶望的である。 取材現場において、もし例外的に金銭の提供が許される場合があると考えて実践しているならば、 むしろきちんと問題提起すべきである。 また、「警察同行取材」 という取材方法である。 権力との緊張関係を放棄して、「警察の広報担当」 にまで落ちてしまった取材は、もはやジャーナリズムではない。 イギリスのBBCは、「番組制作者の指針」 で、不法行為に立会う取材を明らかに公共の利益があると認められる場合に限っている。 そして、取り組むべき課題は、多い。 まず、本件問題の検証である。テレビ東京は、七月四日、「窃盗団報道問題検証委員会」 を設置した。 問題は、その検証の方法・進め方である。この委員会が作成する 「報告書」 をどのように生かすのか。 ただ発表して幕引をするだけでは、再発を防ぐことはできないであろう。 一方で、徹底的な原因追及をして問題を掘り下げるとともに、 他方で、市民との意見交換を行い報道人の判断・価値などを再検討するなど、開かれた検証を行うことを求めたい。 次に、具体的な再発防止策の実現である。ここでは、徹底したチェック態勢と木目の細かいガイドラインの策定が不可欠であろう。 例えば、イギリスのBBCでは、約2万3000人の社員と70人の弁護士が働いているが、 そのうち6人の弁護士が放送前に1年間合計約3000本の番組を見て、意見を述べる態勢になっている。 また、BBCでは、前述した 「番組制作者の指針」(四三章三六一頁) において、 具体的かつ詳細な指針を定めて、 自主的に倫理向上を図っている (日弁連人権擁護委員会 「イギリス・人権と報道調査団報告書」、参照)。 さらに、今回の事件の原因の一つである 「衝撃映像至上主義」「視聴率至上主義」 への批判的取り組みである。 テレビの特性を考えても「衝撃映像」は絶対の価値か。倫理に反しても視聴率をあげることは至上命令か。 メディアリテラシーを視野に入れながら、取材・報道の価値を問い直してほしい。 テレビが取材し放送すべきものは何か、原点に戻って、議論し実践してほしい。 より根本的には、メディア規制法問題と同様であるが、テレビ人を含めた報道人一人一人の自覚である。 日常業務の多忙を言い訳にして、社会的問題に対する関心の低さと倫理への鈍感さを自覚しない生き方である。 先日弁護士会館の地下レストランで食事をしながら携帯電話で 「取材」 を続ける記者がいた。 一喝してもまだやめない。二度注意して会話をやめたとたん、携帯電話をテーブルに叩きつけて悪態をつく。 この記者 (女性) の姿勢に現在の報道人の無反省を見るのは、穿ち過ぎであろうか。 「民間放送」(2002年7月23日号、掲載) |